妊娠と甲状腺

甲状腺機能異常症と不妊症・流早産

 甲状腺ホルモンの生理作用には、成長・成熟作用があります。身体・脳の正常な発育に必須です。甲状腺機能異常症と不妊症・流早産に関するデータは、いずれも流早産率が高いと報告されています。

 胎児の甲状腺は妊娠20w過ぎまで未発達です。児の成長に関わる甲状腺はホルモンは、胎盤を介して母体から得ることになります。甲状腺ホルモンは、過剰でも、不足でもよくありません。バセドウ病も橋本病も妊娠前に適切にコントロールをしてから計画妊娠を行うべきと言えます。

 潜在性甲状腺機能低下

わずかな甲状腺ホルモンの不足を脳下垂体が察知し、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が先に増加します。つまり、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が正常でも、TSHの増加をみて甲状腺機能が低下していると判断します。妊娠に理想的なTSHは≦2.5μIU/mlとされていて、非妊娠時(≦4.7μIU/ml)より低いと考えられています。わずかな甲状腺ホルモンの不足でも、とくに妊娠初期の流早産率が高くなることが報告されています。

​ですので、不妊治療においても潜在性甲状腺機能低下がある場合には、まずこの治療を行うと、妊娠率が高くなります。

 妊娠初期に甲状腺機能亢進と診断された場合

 hCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)は妊娠反応として市販の尿検査試薬の判定にも用いられていますが、12週前後をピークに妊娠をとおして胎盤から産生されます。hCGはTSH(甲状腺刺激ホルモン)と類似作用をもち、甲状腺を刺激するため、妊娠初期にバセドウ病と似た症状(動悸、多汗、痩せなど)を呈する場合があります。つわり(妊娠悪阻)の原因とも考えられていて、ほとんどの場合、妊娠初期の一過性の生理的な反応と思われます。

 バセドウ病との鑑別には、TRAb(TSH受容体抗体)を測定します。TRAb陽性なら、バセドウ病ですので、妊娠中は一般的に抗甲状腺薬で治療を行うことになります。

 

 Poem Study(Pregnancy Outcomes of Exposure to Methimazole Study

 妊娠中、主に使用されるバセドウ病のくすり(抗甲状腺薬)には、メチマゾール(=チアマゾール、メルカゾール)と、チウラジール(プロパジール)があります。メチマゾールには、妊娠初期におけるわずかな催奇形性の問題を報告されており、妊娠12週を過ぎるまでは、チウラジールを優先的に使用する場合があります。いづれにおいても、甲状腺機能を正常にコントロールしてから計画的に妊娠することが最も大切です。

 

 バセドウ病合併妊娠 

 バセドウ病では、妊娠初期をすぎてからも、くすりの胎盤通過性つまり、胎児への影響を考慮しながら、妊婦へ投与量を決めます。一般的に妊娠週数が進むとTRAb(TSH受容体抗体)が減少し、抗甲状腺薬の減量や中止が可能となります。しかし20週以降、TRAb>10 IU/L が続く場合、母体から胎児へ移行するTRAbの影響で胎児バセドウ病、新生児バセドウ病への治療配慮が必要となり、新生児科のある周産期センターと連携(当院では福山医療センターへ紹介)をしてみていく必要があります。

 

 産後  

 バセドウ病の妊婦さんの場合、産後半年前後でバセドウ病が悪化するケースが多いため注意をして経過をみる必要があります。また産後の治療は母乳への移行を配慮して薬剤を選択することも大切です。産後のTRAbの推移や前回の産後再発有無を考慮し、産後の肥立ちに問題がないか経過をみます。

 潜在性甲状腺機能低下では、産後の補充は不要となるケースは多いですが、次回妊娠の予定なども相談して考慮することになります。

 通院間隔について

 妊娠中の甲状腺機能異常については、胎盤が成熟するまでの妊娠20週まで4週毎に、20週以降出産までは状態に応じて4~8週毎の通院をおすすめしています。その理由として、甲状腺機能低下では、児の発育のために甲状腺ホルモンの必要量が増えるため調整が必要です。甲状腺機能亢進では、母体に投与した抗甲状腺薬が児の甲状腺に影響が少なくすむよう配慮して減量あるいは中止を検討する必要があるためです。

​ 産後、治療が不要となっている場合においても、定期に検査をおすすめしています。

 そのほか、日本人は甲状腺の自己抗体を保有する率は高く、年代別にも20代よりも30代、40代と経年的にさらに増加することがわかっています。近年では晩婚化の影響で、甲状腺疾患が、不妊の一因として問題になっています。妊娠希望、家系に甲状腺疾患があるかたは、一度検査をおすすめします。

 妊娠希望、周産期、産後の甲状腺疾患は専門医での適切な管理が大切と言えます。

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